謎の発熱と疼痛、初めての肛門科へ
あれは、寒さが残りつつも桜の蕾が綻びかける3月末の事だった。
その頃、色々あって長年働いていたバイト先を辞めようとしていたんだけど、
辞意は1年も前に上司に伝えていたにも関わらず、安く便利に使える自分を
なんとか辞めさせまいとする上司の企みで
いつまでたっても引継ぎ等が進まず心身ともに疲弊しきっていた。
そんな時期のある日、自宅のPCで作業をしていると股間の奥の辺りに
鈍い周期的な痛みを感じ始め、
そして熱っぽいので測ってみると38度くらいの割と高熱。
股間の痛みは気になっていたけど、我慢できない程ではないので
とりあえずそっちは置いといて、解熱剤を飲んで暫く寝込んで安静にすることにした。
実際、高熱は3日くらいで引いたけど、その後も1週間以上微熱は続き、
その間も股間の奥の方では「ズーン」という感じの鈍い痛みは続いてた。
ただの風邪では無いのは明らか、
何日も続く熱と痛みの場所から判断力の鈍っている自分が出した結論は
「これは、痔が悪化して熱が出ているんじゃないか?」
痛みの場所としては陰部側というよりは
肛門側が痛かったこともあり、行くべき病院は肛門科と判断。
通院することになる可能性も考えて、病院は自宅の近くを選択した。
「選択した」とは書いたけど、
実際はまずは受けてから考えようという感じで病院の評判等は特に調べていなかった。
というよりは、日々状況が改善しない肛門周辺の痛みと微熱が気になって
調べる余裕が無かったというのが正しい。
病院名は迷惑になるといけないので、仮にSクリニックとしておく。
受付→問診票の記載まで
本来だったら、Webサイトに記載されている電話か
Web予約フォームから予約して行くべきだったのかもしれないが
微熱続きでWeb予約フォームへの必要事項の入力が億劫だったのと
サイトに「予約無しで直接ご来院頂いても大丈夫です」とあったので予約無しで行く事にした。
院内は確認した限りでは他の患者さんは1人だけ。
Sクリニックは胃腸科等、肛門疾患以外の患者さんもいる可能性が高いので正直ありがたい。
病院の受付で「初診なんですけど大丈夫ですか?」と聞くと
「はい、今日はどうされましたか?」と聞かれたので
「お尻の方で・・・」と若干小声で答えると、
「はい、ではこちらに記入してください」と丁寧に応対され、問診票を渡される。
問診票は2枚あり、1枚目は一般的な質問事項、
そして2枚目はお尻の状況を詳しく聞く内容だった。
院内が空いてて余裕があったのか、受付の方に
「入口横にドリンクサーバーがありますのでご自由にお飲みになってお待ちくださいね」
とドリンクを勧められる等、とにかく親切だった。
診察→超音波検査へ
問診票を提出してからしばらくすると名前を呼ばれ診察室に。
先生は物腰の柔らかそうなチョイぽちゃの壮年の男性、
最初は問診票に書いた事をほぼ繰り返し説明するような形になったが
肛門周辺に周期的な疼痛があること、発熱が続いている事等を説明したあと
実際に肛門鏡を入れ診察をされることに
診察自体は横向き(シムス位)の状態になり、ズボンと下着をお尻の部分だけ
下せばよかったので思ったよりも恥ずかしく無かった。
肛門鏡には十分にキシロカインゼリーを塗布され、
入れてる途中も「はい、息を吐いて力を抜いてねー」と
都度丁寧に声かけしてくれたので痛み等も皆無だった。
この時点の診察の結果としては、確かに痔はあるが
化膿も見られないので熱が出ているのはおかしいとの事。
もう少し詳しく調べる為に超音波で調べてみる事に。
別の診察室に移動して今度は超音波にて診断。
肛門鏡よりも細いプローブを入れるので、これも痛みは無かった。
そして診断の結果、やはり膿が溜まっている様子は確認出来なかったので
肛門周囲膿瘍ではないとの事。
その後、症状を更に詳しく話しているうちに
もしかしたら肛門では無いのではないかという事で
「ちょっともう一回触診していい?」と聞かれ触診され
今度は肛門の少し奥側を押されるような感覚があったと思ったら
例の疼痛がある場所がジンっとする感覚。
「前立腺ですね、確かに少し硬くなってる。」
なるほど、前立腺か・・・と納得と同時にこの年で前立腺肥大?と不安に。
先生曰く「慢性前立腺炎」で、いわゆる高齢男性がなる
前立腺肥大や前立腺がんとは違って若い人でもなるとの事。
この時、もう少し痛みの場所を明確に把握しておけばさっきの超音波検査の時に
前立腺も診てもらえたのではと少し後悔したが、
その後の先生の言葉で慢性前立腺炎がぶっちゃけどうでもよくなるくらい暗い気持ちになった。
もう、手術しかないですね
先生「前立腺は別として、痔の方はここまで大きくなると、もう手術しかないですね、
薬では治らないです。」
※「手術って・・・切るんですか?」
先生「中の方は注射でいけるけど、ちょっと外側にかかってる部分があるからここは切らなきゃいけないね。」
※「・・・痛いですか?」
先生「まあ・・・痛いよねぇ」
※「手術後は座れますか?」
先生「座れなくは・・・ないかな」
※「・・・・・・・」
すぐには言葉を返せなかったのを覚えている。
恐らく嵌頓痔核や痔ろう等の緊急性の痔ではなく、
私の様に、自身の痔と折り合いを付けながらだましだまし生活をしていた
内痔核ホルダーの人ならば同じ考えを持っていると思うけど、
初診時に医者から聞きたい一番の言葉は
「大丈夫ですよ、薬で治りますよ」もしくは
「切らなくても注射だけで痛みも無く治りますよ」
等の言葉じゃないだろうか?
自分はまだ大丈夫、
病院で薬貰って生活習慣を改めれば何も痛い事をせずに治る。
そう信じて生きてきたここ2年くらいの時間を全否定されたわけだ。
その後、ジオン注射(ALTA)の説明をリーフレットを見ながらしてもらったが
あまり頭に入ってこなかった・・・
というよりも既に知っている知識だったので頭に入れるまでも無かった。
これも皆分かると思うけど、ぶっちゃけジオン注についても他の術式についても
もう今まで散々調べているし、何なら渡されたリーフレットだってPDF版を
既にPC内に持ってるくらいだ。
術式としては、ジオン注+結紮切除による日帰り手術で手術代は35,000円くらいと説明された。
手術代も想定内、というより調べた通り。
想定外なのは自身の状態が自分が思ってる以上に悪かったという事。
入院の必要は無く、提携している別の病院で入院による手術も可能だけど
術式自体は日帰りでも入院でも変わらないという事だった。
袖口が綻んだジャケットを着ている程度には貧乏暮らしなので
お金のかかる入院よりも日帰り手術で済むならばそちらがありがたい。
先生「まあ、いずれは手術しなきゃいけないんだし若いうちにやっておいた方が
回復も早いと思いますよ。今すぐに決めなきゃいけないわけじゃないし、
仕事に余裕のある夏休みとか長期休暇の時に検討してみてください。
確かに術後暫くは痛み等はありますけど、うちよりも痛くないところは無いですから」
・・・なるほど、どこの病院に行ってもこれは切らなきゃいけない状態という事か。
それならば少しでも痛みの少ないうちでやらないかという事らしい。
そして、最後のダメ押しの後、診察が終了した。
先生「前立腺炎のお薬は出しておきますね。
痔の方は、もういらないでしょ?自分でも色々持ってるでしょうし。」
・・・ええ、市販薬は一通り持ってるし、試してます。
薬すら処方されない。
普通ならば薬の必要が無いくらいの軽い状態という事かもしれないが
ここで先生が言わんとしていることは教養に乏しい俺でも十分に理解できた。
来た時よりも重い脚を引きずって、その日は病院を後にした。。。
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